2017年3月22日水曜日

味には人の好みがあるのに、どうしてワインが美味しいかどうか判断できるの?

原文(Français)> "Bon" vs "Qualitatif"
私たちの大切なお客様マダムYの質問への私の回答をここに載せておきたいと思います。
マダムYの質問は:

味には人の好みがあるのに、どうしてワインが美味しい・良いかどうか判断できるの?

です。質問は一見単純に見えるかもしれませんが、その答えはそう明白でもありません。が、もしこの質問を正しく再定義できれば、答えもまた容易となります。

(ここでは「美味しい・良い」と訳した)フランス語の「ボン」は、いくつもの意味を持っていて曖昧かもしれません。
「ボン」の意味には
- (1)飲食を通して感じる喜びや楽しみ、または一般的に感じる喜びや楽しみ。よって、「ボン」は「心地よい」と同義語でもあります。
- (2)品質のレベルが高い。
これら二つの意味は実際には大変異なります。

最初の「ボン」は「心地よい」と同義語で、飲食の喜びと関係していて、これは全く主観的な表記です。「蓼食う虫も好き好き(趣味嗜好には理由がない)」ですよね?じゃあ、ここに議論の余地は無い! 実際、あるワインが「ボン」かどうか、この意味で客観的に判断するのは不可能のようです。それが、マダムYの意図した点のようです…

にもかかわらず、飲食の「心地よいの意味での美味しい」についていくつか言及することはできます。

1/ すでに述べたように、この「ボン」は「品質」ではありません。皆さんに納得いただくために、私の子供たちの例を紹介します。もし私が彼らに何が美味しいか、もしくは何を食べたいかと問えば、彼らはこれと言うでしょう:

けれど私は、これが上質とは見なさないでしょう。

2/ 味の文化、味覚の学習、もしくは食育と呼ばれるものがあります。
人の味覚というのは、その人の生活や経験如何によって発達します。乳児は母乳しか好きではありませんし、チーズ、マーマイト、味噌などの発酵食品の味わいを受け入れるのには、一般的には時間がかかる、などなど。

3/ 私はまた同時に、何でも美味しいというのにも理解できません。全て美味しいというのは、つまり味覚が全くない、もしくは批判精神が無いのと同じです。このことに関して、10年以上熟成した素晴らしいブルゴーニュの白ワインを試飲した時のことをお話ししましょう。私たちは、ペルーからの20名ほどのお客さんと一緒でした。誰もがその熟成白ワインを驚くべき素晴らしさだと言いました。ただ、ブルゴーニュワイン初心者の一人を除いては。彼女は、ワインが「フルーティー」でないという判断で、好きではないと言い放ったのです。彼女の分析は明快適切で、長期熟成させたこのワインには全く果実味は無く、実際だれもこのワインに果実味を追求しません。この方が、自分自身が好きか・喜ばせられたかどうかを知ることができる精神の完全な自由さに、私は大変感銘したのです。最後に、ワインを選ばなければいけない専門家が、どれも美味しいでは困ると思います。

では今度は、マダムYの素朴な質問中の「美味しい」を「上質」に置き換えてみると、

どのようにワインの品質(上質かどうか)を判断するのか?

となります。

今度は、私は客観的にワインの品質を評価することは全くもって可能だと断言できます。そのためには、観察可能で、妥当・健全な品質の基準を定めなければいけません。そうすれば全く問題ありません。

その基準にはどういうものがあるでしょう?その点については、幾つもの信条や学派などがあります。それはそこに集う人々の興味によって大変異なります。そして、沢山のストーリーがあります。中には信憑性に乏しいものも。

多くのストーリーの中で、私があまり高く評価していないものをあげると、
- 「古い」ワイン。これは日本では大変人気です。この場合、古ければ良いワインとなるわけです。だから、40年もののブルゴーニュ広域や、10年物のボジョレー・ヌーヴォーを飲むわけです。
- パーカー・ポイント。0から100点で点数付け。分かり易い。グル(導師)を信じるだけで十分。
- ワインの価格。更に絶対的な順列の基準です。高ければ高いほど良いワイン。
- 「自然派」ワイン。ワインが「自然に」作られていなければいけない。アイデアは美しいけれど、実態とは全く関連していない。
- 「亜硫酸塩不使用」ワイン。醸造の際に亜硫酸塩を仕様していなければよい。
- ビオディナミ。シュタイナーを始祖とするある種の宗教。誰も彼の本を理解できないでしょう。

ビオ」についてはもう少し皆さんにお話しできることがあります。ビオには政府機関が制定した仕様があります。アイデアは「化学的に合成したものをブドウ畑に使用してはいけない」ということです。勿論議論の余地は大いにあるのですが、ここではお話ししません。

皆さんに笑っていただいた(と、少なくとも私は願っているのですが)その後で、我々ヴァンファン本浜が支持する原則に戻りましょう。それは、「テロワール」ワインです。もしあなたがこの使い古された言葉を好きでないなら、アイデアを次のように言い換えてもよいです。

ワインが、ブドウが作られた場所の区画を反映したもの

区画のワインというこのアイデアは、ブルゴーニュ・ワインの格付けと商品化の中心を成すものです。

例えばここにジュヴレ・シャンベルタンの区画を記した地図があります。



区画とは、何ヘクタールかの四角い土地です。上級のブルゴーニュワインは、そのブドウの作られた区画の名前を付けます。アイデアは、まず最初に区画が品質を決め、そして大体ワインの値段も決まるのです。

最も有名な区画は、何世紀も前から定められています。フランス政府公式の格付けは、ブルゴーニュ・ワインは1936年(AOC)からありますが、これは畑の区画にのみ格付けするものです。一方ボルドーの場合は異なっていて、ワインを生産するドメーヌ(ボルドーではシャトーと呼んだりする)を格付けします。

もしワインがよく作られていれば、ブラインド試飲で、作られた区画を当てることも可能です。例えば、よく作られた「ラヴォー・サン・ジャック」は、ラヴォーのような味がするはずだし、カスティエはカスティエのような味わいのはずなのです。

マダムYの質問を再編成して回答すれば、ワインの根本的品質は、作られたテロワールを反映しているべき、と考えるならば明らかです。

そうすれば今度は、テロワール・ワインについて興味深い質問を更にすることもできます。
- テロワール・ワインはボン(美味しい)か?--「心地よい」と私は思います。
- テロワール・ワインのアロマや香りはどんなですか?試飲によってどのように見分けることができますか?
- テロワール・ワインはどのように作りますか?

そんな話をしたい方は、どうぞ私たちに会いに来てください。ご一緒に大いに語り合いましょう。

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