2015年1月3日土曜日

世界で一番美しい瞬間 黄金の丘 輝くとき フランス・ブルゴーニュ 



先日、私たちの周りの多くの方から、テレビでブルゴーニュの収穫の様子が放送されたと伺い、私たちは普段テレビをあまり見ることがないのですが、早速その番組「界で一番美しい瞬間 黄金の丘 輝くとき フランス・ブルゴーニュ」の再放送を拝見しました。

番組は、アナウンサーの長身の好青年が、ブルゴーニュのワインのブドウ畑で「美味しい賄い飯と引き換えに収穫の手伝いを無料でします!」と書かれたTシャツを着て、収穫をするという内容でした。美しいブルゴーニュの秋の風景が紹介され、その中でこの好青年がくたくたになって約1週間仕事をする様子が紹介されていました。他にも日本やアジアからのお手伝いの方が何名かうつっており、なかなか多国籍で楽しそうな収穫の様子が流れていました。

実は私たちは以前から、ワイン好きな仲間をぜひブルゴーニュにお連れして収穫の体験をさせたいと思っていました。ワインを知るのに、この上ない機会ですし、実際ワイン作りにとって最も重要な作業に違いないのです。実際にブドウを作る場所を見て触れることが、ワインをもっと理解するには一番良い方法だと思います。ですから、そのために方々に交渉し周到に準備を進めていたのですが、なかなかその夢がかないません。参加される日本人の方や、受け入れる生産者の方に法的違反があってはいけません。以前、知り合いの料理人さんから、知人がフランスのレストランで許可なく仕事をしたため捕まり、まさに着の身着のままの言葉通り、コック服のまま日本に送還されたという話も聞きました。

どこの国でも他国籍のものが仕事を行うには労働のためのビザ等の許可が必要になるでしょう。しかし、フランスでは現在特に高失業率で、正当な事情がなければヨーロッパ以外の国籍者に就労させることは非常に困難です。また、フランスでも重要産業の一つでもあるワイン産業における一番大事な仕事であると同時に最もコストのかかる収穫において、労働者の権利と義務、つまり正当な報酬と、労働者としての申告が適正に行われているかどうかフランス政府の企業・公正取引・消費・雇用監督局も厳密に通達と検査を行っており、近年では収穫時期にはヘリコプターを飛ばして収穫人員の数を確認したりしているとも伺っています。そしてつい先日は、今年から収穫の仕事の労働報酬も納税等の対象になるとの報道がありました。

私たちは、収穫研修の目的と意義を力説し、行政の関係先に方々問い合わせましたが、こういった誰も責任を取りたくない件に関してはたらい回しの上回答を遂にはいただけないというのが、フランスの常なのです。

ところで、私たちはフランス語レッスンを日ごろ行っているのですが、生徒さんの中には、フランスでお料理やお菓子の勉強をされに行く準備をしている方もいます。高額な授業料を払って留学プログラムを受講される方もいます。また、自力でワーキングホリデービザを取得する方もいますが、フランス領事官はなかなか留学生泣かせで、皆さん大変苦労されています。

フランス・ボーヌに農業省管轄のワインの職業訓練校があります。こちらは、ブルゴーニュの生産者が専門的に学ぶワインの学校ですが、こちらも実は私たちと同じ問題を抱えていて、現在短期研修の収穫体験が行えないそうです。この学校の方に伺ったところでは、この学校の生徒として(短期でない)正規国家資格コースに入学し学費を納め、ワインを学ぶ留学生としての資格を取られたまま、この学校には遂に現れないアジアからの人もいるそうです。生産者で研修を行うために、そこまでされるようです。

いずれにしても、フランスで研修を積むのは容易ではなく、時間と労力、そして費用も大変にかかるのです。

番組の最後では、この青年が「がんばったで賞」とマジック書きされた収穫の仕事のご褒美のワインを脇に、今回受け入れられた生産者の方自身が読み上げられるお便りが流れ、回顧しているシーンがありました。この青年はおそらく忘れがたい経験をされたのでしょう。

早速、これはどういう製作目的でどういった許可で撮影されたのか伺ってみようと、受け入れられた生産者のほうに問い合わせてみました。メイルではなかなか返事がなかったので何度か電話を差し上げようやく直接お話を伺ったところでは、この生産者の方はプログラムを見ていないので内容はよく分からない、この年の日本人研修生は一人だけだ、他の人は何をしたのか知らない、との何とも腑に落ちないお話でした。この研修生は、番組中にお名前が紹介された醸造を仕事としている女性のことでしょう。

そこで、今度はこの番組を放送した放送局の問い合わせ先に電話しました。電話で対応された方は「ボランティアで行ったのだから問題ないでしょう!」とのご返答で、納得いかなければ再度メイルで問い合わせるよう言われましたので、どういった目的でどういう許可のもとで撮影されたのかとメイルしました。しばらくしてきた返事はこうでした。

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ご質問いただいた件ですが、ぶどうの収穫は、取材として体験したものであり、収穫を仕事として行ったわけではございません。
番組上も、「無償で収穫を手伝います」と表現をしており、「仕事を無料でする」とは表現しておりません。
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番組では日本人を含む多くの仲間と収穫の体験をする内容だと理解したのは私だけでしょうか?じゃあ、収穫の仕事を紹介するのに、巧妙にドキュメンタリー仕立てで「がんばったで賞」まで与えるような番組にする必要はなんだったんでしょう?

放送局さんも無償の手伝いと無料の仕事の違いを是非監督局にご説明いただけると助かります。そして今年は私も、皆さんと一緒に「無償で収穫を手伝い」に行って、私たちのブログで様子を日本中にご紹介できるとよいです;-)


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