ブルゴーニュ赤ワインの試飲をしている中で、ここ4~5年の傾向として、「フルーティ」なワインを作る流行が、ゆっくりだけれど顕著に広がっているのを、私は実感しています。
多くのドメーヌや、グランテロワールから上質の本格ワインを作ることで以前は知られていたドメーヌでさえもその傾向があります。所有者が変わったり、また世代交代などでスタイルが変わることもあります。また、まだ経験の浅い若い生産者が自分のスタイルを追求する中で、両親世代とは違うものを求める時にそういうスタイルになることも多いようです。
私は、このスタイルは破滅的と思います。良くない品質のワインがこのスタイルのことが多いです。
まず最初に、「フルーティ」ワインとは何か?
このテクニックは、ボジョレー地方から来ています。これは要するにカルボニック・マセレーション、または「セル(ブドウの粒)の内部」の発酵です。このテクニックを行うには、ブドウの実を丸いまま槽に入れておかなければいけません。そのために、以前は茎につけたまたのブドウの房全体を使用しなければいけませんでしたが、現在はブドウの実を潰さずに機械で除茎できます。次に、アルコール発酵は、一般的には半開放の槽にて温度を調節しながら行います。これらは全て、フルーティな、いわゆる「発酵の」アロマ---つまりエステル香---を最大限に作り出す手順です。このアロマは、タンニンとは全く関係のないもの、つまりブドウでも、テロワールから来たものでもありません。大変揮発性が高く、どこにでもある一般的な、強烈だけれどすぐ飽きてしまう、いつもどれも同じフルーティなアロマです。そしてその上、長期熟成しません。そして付け加えると、この「フルーティ」ワインは濁っていて、口中では乱雑でクリアでなく、余韻が無いことが多いです。
何故それが良くないのか?
上級テロワールで作られた上質なブドウならば、そのブドウに欲しいものはタンニンで、それ以外の物は何も要らないはずです。グランヴァンのアロマは、本質的にタンニンを基にしているので、良いタンニンが十分に沢山あれば、そこから長期保存できるグランヴァンを作ることができます。こういったワインは、「フルーティ」なワインとは全く味わいが異なり、口中には長い余韻が続き、高貴なアロマと複雑さが、レトロオルフェクションにより感じられます。よって、長期保存できる素晴らしいポテンシャルがあるワインに、何もわざわざフルーティなアロマを付け加える醸造をする必要はないはずです。その上、このフルーティなアロマは他のものを覆い隠してしまうので、むしろ付け加えるべきではありません。上級テロワールからフルーティなワインを作ることは冒涜です!
なぜそういうワインは品質が良くないことが多いのか?
この醸造方法で作ったフルーティなアロマは、本来の味わいを隠しがちで、一般的にはカムフラージュです。この醸造方法を用いれば、あまり上質でないブドウ、つまり上質なタンニンを備えていないブドウから、大衆受けするアロマを持たせることができます。例えばピノ・ノワールのワインを作る生産者が、収穫量が多すぎた時にはフルーティなワインを作るのも選択肢の一つではあるでしょう。最後に一言触れるなら、フルーティに作られたワインは、酸味が弱い他にも、揮発性の香りの割合が大きく、場合によってはワインの病気の一つでマニキュアのアロマなどに例えられる「酢酸アタック」に侵されていることがよくあります。これは、この種の醸造法でかなり頻繁に見られます。
ブルゴーニュワインの多くはつまらない平凡なワインとなってしまったことが残念ながら明白です。私は良く生産者の友人たちと話すのですが、私だけでなく誰もがこの現象に同意見です。20年ほど前にマイクロ・オキシジェネーションがボルドーワインを殺してしまったように、カルボニック・マセレーションがブルゴーニュワインを殺そうとしています。
参照>
- 原文:(français) Le vin fruité, c'est de la m...
- (日本語/English) Trends in Burgundy - red ブルゴーニュの流行 - 赤の場合
- (日本語) オートクチュール・ワイン(赤) - 仕様書