2015年10月21日水曜日

美味しい渋み・タンニンについて

この時期になると、実家の母は庭の柿仕事に追われます。渋柿をせっせと剥いて麻紐に吊るして干し柿にしたり、焼酎に漬け込んで樽柿にしたり、などなど、田舎の山の恵みを満喫できるのも秋の楽しみです。

ところで、皆さんに渋みとは?と聞かれたら、渋柿の渋みを不味い渋み・タンニンとして挙げるとすぐ納得されるので、わたしも多用しがちだったのですが、最近ちょっとこの事で考えることがありました。


ある方が、「ブルゴーニュ(の赤ワイン)にタンニンは不要」という要旨をブログで仰られていました。
あれ?と私は思い、日本国内での色々な方のワインコメントなどをおさらいしてみました。
確かに、渋みやタンニンについては、タンニンがあることイコール欠点のような単純なコメント以外には、タンニンについて言及されているものを見ることは殆どありません。昨今の流行なのか、ワインの味わいはとても詩的に表現される方が多いのですが、そこに渋みを想像させるものはまずありません。
確かに日本では果物のブドウを食べるとき、皆皮を食べないものなあ。渋みは日本人は受け付けないのかしら??


ヴァンサンにもタンニンについて聞いてみました。
彼曰く、赤ワインというのは本質的にタンニンの品質(を楽しむもの)です。でなければ白ワインを飲んだほうがいい。赤ワインのテロワールの偉大さというのは、それが与えるタンニンの質と量を言うのです。タンニンの多少の例を挙げれば、サヴィニーはあまりタンニンがない、ジュヴレ・カスティエやポマールの南などはタンニンが多い、など区画(土壌と局所気候)によります。
けれど実際は、全房発酵で非常に弱い抽出のワインが昨今の流行である(だった)ことも本当です。タンニンが少ないのは、抽出できない悪いブドウが原因ということもあるそうです。

ところで、ヴァンサンはかれこれ約1年以上前から「ブラックチョコレート・キャンペーン」なるものを展開中です。サンバレンタインデーには、僕にはブラックチョコレートをください!という、これまた随分勝手な話ではありますが、ヴァンサンにとってチョコレートの味わいは、まさにこのカカオのタンニンなのです。上質なカカオの味わいは確かに美味。ミルクチョコレートのミルクは、カカオのタンニンを隠すお化粧でしかなく、それが更にスキムミルクパウダーみたいな安価な混ぜ物だと、全く本末転倒なわけです。

ヴァンサンはよく、ワインの抽出をコーヒーにたとえます。煮出したり、搾り出したようなコーヒーのタンニンは不味いけれど、美味しいところの美味しいものだけを引き出したものがコーヒーでもワインでも美味しい、といいます。フランス語では「crème de la crème」と言いますが、英語では、「best of the best」といった感じでしょうか。これはタンニンやワインだけには限らない表現ですが、赤ワインの場合、タンニンの抽出は最も重要な要素の一つで、美味しいブドウから美味しい部分だけを取り出すことが大切なのです。

緑茶もまた然り。渋みの無い色だけのお茶では、まったく美味しくないのはおそらく皆さんご同意いただけるのではと思います。ところが、同じ渋みでも、3度も4度も煮出したようなものや、熱湯またはぬる過ぎる白湯で入れたもの、抽出の時間や、しまいには黄色くなった緑茶や、茶葉が古かったりしても、風味や味わいが全く劣りますよね。
上質の茶葉で、適度な温度と時間で入れた緑茶の美味しさは誰でも納得いただけると思います。そんな渋みは、甘さにも通じるような、しっかり口の中で感じ、嫌味がいつまでも口に残ったりはしない、ビロードで撫でたような舌触りです。そしてタンニンは茶葉の種類や生産方法や地域ごとに本当に千差万別ですね。

このことはどれも、「ワイン」や「ブドウ」に言葉を入れ替えてもほぼ同じことです。私は、渋み、タンニンは日本人の持つ立派な味覚の要素の一つであり、渋みの良し悪しはきっと皆さんも感じることのできる素養があるはずだと考えています。そしてワインの中にも美味しいタンニンを是非感じて味わってほしいと思っています。
Yoko


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