2017年8月19日土曜日

古いワイン(その1):ワインは何でも長く置いておけば置くほど良いの?

私たちはよく、20年とか50年とかいう大変古いワインについてのアドバイスを、日本のお客様たちに求められるのですが・・・
ジェルマン家(ムルソー)の個人的ストック
皆さんのお役に立てればと思い、次の質問に簡単に答えてみようと思います。
  • ワインはどのくらい長く保存できるのか?またその理由は?
  • どのワインが保存できるのか?
  • シャンパンはどうか?
古いワインの出所(でどころ)日本における偽ワインの問題については次の記事(古いワイン(その2):そのワインどこから来たの? そして日本の偽ワイン問題)で述べたいと思います。


 1.ワインはどのくらい長く保存できるの?


まず最初に白状すると・・・
ワインやシャンパンまで、大変古い、というか「古すぎる」ワインがもてはやされている日本のある種の流行に私は大変驚いています。売れ残りの古い在庫を一掃できるので販売者によっては確かに良い時世かもしれませんが、試飲の観点からはナンセンスです。10年以上も保存できるように作られたワインは本当にわずかです。多くのワインは、果実味のあるアロマで、早く消費されることを念頭に作られています。長く保存できるワインは比較的希少で、瓶中にマチエールがなければいけません。よって、テロワール「と」長期保存のための醸造が必要です。

どうして保存させるの?
瓶の中にワインを保存すると、発達するアロマもあれば消失するアロマもあります。長期に保存できるワインは、保存することで、時間とともに複雑さが増していくべきなのです。そうでない、その他の大多数のワインは、それとは逆で、何年か以上は保存できません。

経験からは、長期保存できるワインで、そのワインの頂点で最大約10年くらいです。それ以降は、それ以上にワインが複雑さを得ることはなく、せいぜい現状維持です。

そして日本でよく言われる、グラン・ボルドーは40年待たないといけない、という命題は絶対に反論したいです。死んだ後にしか飲まれないようなワインを作るような生産者はいません。

それから、不味いワインが時間をかけて待てば美味しくなるなんてことも絶対無いのも付け加えたい点です。その事について、アンリ・ジャイエが言った言葉を思い出します。彼は、長く保存できる素晴らしいワインをどうやって作るか知っていたのは確かですが、その彼が「グランヴァンは、そのワインの一生のどの時点でも美味しい」と言ったのです。要するに、ワインが10年経っても美味しくなければ、そのワインは美味しくないし、その後美味しくなることもないと思います。



2.長く保存できるのはどのワイン?


フランスワインに限ってお話します。イタリアなどは勿論、フランス以外のワインも長期保存できるワインがあると思います。

赤ワインについて
上質なタンニンを作るテロワールがなければいけません。以下に幾つかアペラシオンを挙げてみます。

ボルドーのグランクリュ:右岸はポムロルサンテミリオン・グランクリュ、左岸はグラーヴとメドックの格付け

ブルゴーニュのAOC:ヴォルネイ、ポマール、コルトン、ニュイ=サン=ジョルジュ、ヴォーヌ、シャンボール、モレ、ジュヴレのプルミエクリュとグランクリュ。


コート・デュ・ローヌのうち、シャトヌフ・デュ・パプ、コルナス、エルミタージュ、コート・ロティ。

ロワール
では少なく、シノンソーミュール・シャンピニーの大変良い年であれば保存できるかもしれません。


クリュ・ボジョレーでは、ムーラン・ア・ヴォンのようなワインは長く保存できる可能性が大きいですが、良い生産年と、ジャナンブルガードなど特に生産者を選ばなければいけません。ラピエールとその仲間、つまり「自然」と呼ばれることを好む人たちの作るジュール・ショヴェのスタイルは避けるべきでしょう。

最後に最近では、ラングドックでカべルネ・ソーヴィニヨンから洗練された長期保存ワインを作るドメーヌがあります。
ポマール プルミエクリュ: 素晴らしく長期保存できるワイン

20年もののムーラン・ア・ヴォン

25年経ったシノン
辛口白ワインは?

コルトン、ムルソーのプルミエ・クリュと村名ピュリニーとシャッサーニュのグランクリュとプルミエクリュ。但しピュリニーとシャッサーニュの村名は含みません。それから、白ワインはプレモックスにご注意!白ワインを長く保存するには、ジェルマン、コシュ=デュリ、ジョバール・・・といった生産者のように適切な醸造によって作られなければいけません。一方でドメーヌ・ルフレーヴのような若いうちから大変良く味わえるワインは、暫く保存した後の状態が大変ランダムなようです。
約15年保存されたムルソーの色(アンリ・ジェルマンのリモザン)
また白の長期保存可能なワインは、サンセールプイィ=フュメロワールのソーヴィニヨンにもあります。但しここでも、これらのAOCワインでも長く保存できるワインはほんのわずかです。例えば、コタデラポートブレイ・・・が作るワインの中にはあるでしょう。

ロワールやボルドーの甘口ワインは、一般的にはワインは良く保護されているので、長く保存できるかもしれませんが、私はあまり詳しくありません。アルザスもグランクリュやリースリングなどの上質品種は保存するのに大変良いものもありますが、これも私はあまり詳しくありません。

最後にジュラの酸化熟成ワインがありますが、これは酸化を心配することは当然ありません。

皆さんに気をつけてほしいのが、

ワインがAOCアペラシオンだからといって、ワインが必ずしも長く保存できる訳ではありません。

生産者によっては、グランクリュでも早く飲むべきワインもあります。例えば、ブルゴーニュの生産者であまり抽出の強くない全房発酵を行う、パカレ、ロック、ド・モンティーユ等・・・、また白ワインでエレヴァージュが比較的短いルフレーヴなどがすぐ思い浮かびます。長期にわたり保存できる赤ワインなら、ドメーヌ・ルジェやルシアン・ボワイヨ、ドメーヌ・ポルシュレのような古典的醸造の生産者、白ならエレヴァージュを長く行う生産者をお勧めします。


3.シャンパンは?


シャンパンの大多数は、若いうちに飲まれ、長く保存できるようには作られていません。長い保存に耐えうるようなエレヴァージュをした醸造を行ったものはほんのわずかです。ロゼはなおさらです。シャンパンでは通常マロ=ラクティック発酵を途中で止めるので、そのために残留するリンゴ酸による硬さ/酸っぱさが和らぐのを待つためだったとしても、そういうものを長いこと保存する意味は私は見いだせません。


参照記事>



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