原文: Grands blancs de garde - cahier des charges(仏語)
伝統的なブルゴーニュの素晴らしい白ワインとは?
どれが高貴なアロマ、つまりテロワール由来のアロマか?
素晴らしい白のテロワールワインはどうやって作るのか?
ワインについて絶対的真実はなく、醸造学で全てを説明付けるにはまだ程遠いのですが、ここでは、生産者と議論しワインを試飲して得た信念を、質問に答える形で紹介します。
何がテロワールの味わいで、何がそうでないのか?
良いテロワールでは、どんな年でもブドウが良い成熟を得ることができます。良いテロワールは特徴的なアロマをもたらし、毎年それが再現可能です。
以下が、素晴らしい白ワインがもつテロワールの特徴的アロマです。
- 種々の石の味わい、塩分を含んだ味わい、ヨウ素、火打石など・・・この最初の味わいのグループは、一般的にワインの「ミネラル感」を思い起こします。しかしこの呼び方はあいまいで、時に混乱を招きます。このミネラル感は、区画もしくはクリマごとに特徴をもち、ジュラ紀の粘土石灰質の異なる土壌の性質と大変密接な関係を持っています。しかし、土壌の中のミネラル自身は何も味わいはないのです。
- 高貴なアロマ。たとえば、アーモンド、デザート、クレム・ブリュレ、白い花、菩提樹、生のヘーゼルナッツ、カンゾウ、外来フルーツ、ドライフルーツ(アプリコット)、など・・・。シャルドネが瓶中で時間をかけて、または栓抜後に空気にさらされて作られます。これらもまた、クリマごとに大変特徴があります。シャッサーニュ、ピュリニー、ムルソー、コルトンなどのそれぞれ異なる特徴は、味わうことで容易に納得できます。例えば、シャッサーニュの広がるようなアロマや、ピュリニーのミネラル感、ムルソーのエレガントさなど、一般的に表現することもできますが、これでは、同一アペラシオン上でモザイク状に分かれた区画の違いはうまく表現できません。ムルソーを例にとると、斜面上部のワインは、ピュリニーのアペラシオンの北側に位置するピュリニー プルミエ・クリュに大変似ていることがあります。これから説明できることは、本質的にこれらの区画の土壌が似ているということです。
また、テロワールとは無縁で、テロワールワインにおいては興味の対象でないアロマを挙げると、
- バター、そしてその後すぐ蜂蜜の味わいになるアロマ。このアロマは、樽熟成時に酸化させて作るシャルドネワインの典型です。こういったアロマを好む人もいるのですが、この味わいが他のアロマを隠してしまってはいけませんし、第一これはテロワールとは全く関係のないアロマです。 蜂蜜の味わいがしすぎるワインは、疲れてしまったワインか、悪い熟成をしたワインです。
- 若いワインの中にある発酵のアロマ。これは何年か後には消失します。
- カレーやクルミなどの、酸化のアロマ。これはソトロンと呼ばれる芳香で、ウイヤージュ(木樽のワインの補填)を行って作るワインにあってはいけないものです。
- ローストピーナッツなどの強すぎる悪い還元香は悪い澱由来です。
- 樽香
- その他、失敗由来のアロマなど
市場の傾向はというと、バターや蜂蜜の味わいに樽香の効いたものや、発酵のアロマのワインを多く作っています。これらのワインの味わいは実際作るのは容易で、万人受けし、早いうちから飲むことができます・・・が、結果的にあまり品のよいワインではありませんし、正しく熟成していきません。熟成前酸化「プレモックス」と呼ばれる、うまく長期熟成しない現象を引き起こすことが知られています。
私は、ウイヤージュを行って作られるシャルドネ典型の、脂肪質(グリセリン)がほんの少しある中に、テロワールがきちんと表現されていて、時には軽い蜂蜜のニュアンスが感じられるような白ワインが特に好きです。この繊細なバランスは、瓶の中で何年も時間をかけた熟成の中でつくられます。
2.バランス(酸味/アルコール)
ワインはバランスが大切です。
素晴らしい上級白ワインは、酸っぱすぎたり逆に重ったるすぎず、決して飽きることなく飲むことができるワインだと私は考えます。素晴らしい上級白ワインは、食前酒でもなければデザートワインでもないのです。それ1つだけを飲み終えることができるワインで、1~2杯で次に赤ワインへと移りたくなるようでもいけません。
素晴らしい上級白ワインは、酸っぱすぎたり逆に重ったるすぎず、決して飽きることなく飲むことができるワインだと私は考えます。素晴らしい上級白ワインは、食前酒でもなければデザートワインでもないのです。それ1つだけを飲み終えることができるワインで、1~2杯で次に赤ワインへと移りたくなるようでもいけません。
ゴージャスで重たく酸味が少ない白ワインが流行った後、現在は酸味がずっと印象的な緊張感あるワインが主流です。多くの生産者は、「十分に熟していない」ほうが、熟すのを待って多くのブドウを腐らせて生産量を減らしてしまうよりはましと考え、ブドウが熟したか否かといった段階のかなり早い時期に収穫します。このリスクを避ける姿勢は、畑での悪い仕事にも通じます(先を参照)。ウイヤージュを行うシャルドネが酸味に欠けると、一般的には長期熟成が難しくなります。一方、酸っぱすぎるワインは、いつまでたっても酸っぱいワインなのです。
3.ブルゴーニュの素晴らしい上級白のテロワール・ワインはどうやって作るか
ワイン作りの手順は?難しさは?違いを決定付ける技術的ポイントは?
レシピのキーワードは
- よい収穫: 完璧な健康状態。ブドウのフェノール熟成とアルコール熟成共によい熟成。よい酸味がある。
- 木樽を用いて、上質な澱上で長い熟成。酸化の操作や澱の自己分解の遅延などの目的のための、人手の介入をできるだけ行わない。
以下は、作り方のもう少し詳しい内容のチェックリストです。
- 比較的遅く収穫することで、よい酸味とよい熟成を同時にもったブドウを得ることは一般的には可能です。しかし、そのためには、ブドウ畑でのよい仕事がまず不可欠です。ブドウの木が深く根を張り易くする土壌の仕事は、果汁の酸味を適切にすることを助けます。一方、健全でないブドウはもちろん、肥料(酸化カリウム)を与えることも酸味を下げてしまいます。熟しすぎたり痛み始めたシャルドネのブドウは、酸味をたちまち失ってしまうので注意が必要です。よって、最適な成熟時に収穫するのが絶対条件です。
- 収穫されたブドウはつぶれないように浅いカゴに並べます。そうすることで、ブドウが酸化することを防ぐので、収穫してすぐプレスする必要はありません。
- 収穫時の選果。上質の果汁と澱を得るために、槽に入れるブドウは完璧な状態でなければいけません。
- 果汁の酸味を調節しない。
- ブドウの成熟加減によっては0.5パーセントまでの補糖は可能。
- 不純物の除去の選択は、生産年によります。上質の澱をある程度残すのは絶対不可欠です。
- アルコール発酵とマロラクティック発酵は長く時間をかけて、共に木樽で行う。
アルコール発酵は、温度が20度を超えないうちはゆっくり進むので、200リットル容器の小さな木樽で冷涼なセラーにて「自然な」温度調節機能を用いて、ゆっくり発酵を行います。(私は温度調節機能の備わったステンレス発酵槽は拒否します)。アルコール発酵は、一般的には95パーセントは最初の2ヶ月で行われるのですが、残りの5パーセントは1年をかけて行います。選んだ発酵酵母を後から加えることはしません。-- 美味しさはどこから来るのかお分かりですよね?
- これら2つの発酵(特にマロラクティック発酵)を進める温度は、得られるアロマの種類に本質的に影響を与えます。実際、温度が2度違うだけで、酵母やバクテリアを壊したり、逆に活発にさせたりするのです。
- アルコール発酵とマロラクティック発酵は共にきちんと終わらせなければいけません。発酵は二冬を越して行われます。アルコール発酵が完了しないうちにマロラクティック発酵が始まってしまう場合も時にはありますが、問題ではありません。
- ワインは上質な澱上で熟成されます。澱の自己破壊がゆっくり進み、拡散されて、ワインに興味深いアロマを伝えていくのです。
- この長い熟成の間、酸化作用は制御・抑制されていなければいけません。木樽は補填されます。可能な限り人の手を加えないようにします。バトナージュは禁止です。瓶詰め前に一度だけ澱引きを行います。小穴の多い新樽や風通しのよいセラーなどは、ワインの酸化を促進してしまうため、新樽の使用やセラーの換気は制限します。最後に、ワインの酸化の観点から、セラー中の樽の配置の仕方も大切です。
ここで分かることは、ワインの熟成のためのセラーは大変重要だということです。経験から言えることは、同じワインの樽でも、セラーに置かれた位置が異なれば、異なった熟成をします。また、平均温度が11~12度のセラーと、13~14度のセラーでは、異なったワインになります。
- 異なる木樽のワインをアッサンブラージュしたあと、軽くフィルターにかけ、清澄作業をします。
- ワインの熟成前酸化を防ぐために、最後に瓶詰め前に軽く亜硫酸塩を加えます。二酸化硫黄が大体30~40mg/l 含まれるようにします。生産者は各自この値を経験から知っており、醸造の方法によって決められます。
4. 用語解釈
バトナージュ
ワイン醸造の際のテクニックで、「バトン」と呼ばれる金属の棒で木樽の底に溜まった澱を混ぜます。これは、澱の粒子を分散させ、澱とワインの接触面積を増やし、そしてワインを酸化させる効果があります。これは、一般的に、よく言われる「バターの味わい」をつくり、若いうちから開いた、より脂肪質(グリセリン)なワインにします。このテクニックは、長期熟成によって獲得されるべきものを短期に得る手段とみなすべきでしょう。バトナージュの適用は、本質的に経済的理由です。1年以上樽熟成させないので、二種類の生産年のワインをセラーに同時に保存する場所の確保が省けます。バトナージュは、ワインの種類によっては疲れさせてしまうので、熟成前酸化の危険性をかなり増やす疑いがあります。
参照: 原文(仏語)
併せて読みたいその他の記事:
ワイン作りの手順は?難しさは?違いを決定付ける技術的ポイントは?
レシピのキーワードは
- よい収穫: 完璧な健康状態。ブドウのフェノール熟成とアルコール熟成共によい熟成。よい酸味がある。
- 木樽を用いて、上質な澱上で長い熟成。酸化の操作や澱の自己分解の遅延などの目的のための、人手の介入をできるだけ行わない。
以下は、作り方のもう少し詳しい内容のチェックリストです。
- 比較的遅く収穫することで、よい酸味とよい熟成を同時にもったブドウを得ることは一般的には可能です。しかし、そのためには、ブドウ畑でのよい仕事がまず不可欠です。ブドウの木が深く根を張り易くする土壌の仕事は、果汁の酸味を適切にすることを助けます。一方、健全でないブドウはもちろん、肥料(酸化カリウム)を与えることも酸味を下げてしまいます。熟しすぎたり痛み始めたシャルドネのブドウは、酸味をたちまち失ってしまうので注意が必要です。よって、最適な成熟時に収穫するのが絶対条件です。
- 収穫されたブドウはつぶれないように浅いカゴに並べます。そうすることで、ブドウが酸化することを防ぐので、収穫してすぐプレスする必要はありません。
- 収穫時の選果。上質の果汁と澱を得るために、槽に入れるブドウは完璧な状態でなければいけません。
- 果汁の酸味を調節しない。
- ブドウの成熟加減によっては0.5パーセントまでの補糖は可能。
- 不純物の除去の選択は、生産年によります。上質の澱をある程度残すのは絶対不可欠です。
- アルコール発酵とマロラクティック発酵は長く時間をかけて、共に木樽で行う。
アルコール発酵は、温度が20度を超えないうちはゆっくり進むので、200リットル容器の小さな木樽で冷涼なセラーにて「自然な」温度調節機能を用いて、ゆっくり発酵を行います。(私は温度調節機能の備わったステンレス発酵槽は拒否します)。アルコール発酵は、一般的には95パーセントは最初の2ヶ月で行われるのですが、残りの5パーセントは1年をかけて行います。選んだ発酵酵母を後から加えることはしません。-- 美味しさはどこから来るのかお分かりですよね?
- これら2つの発酵(特にマロラクティック発酵)を進める温度は、得られるアロマの種類に本質的に影響を与えます。実際、温度が2度違うだけで、酵母やバクテリアを壊したり、逆に活発にさせたりするのです。
- アルコール発酵とマロラクティック発酵は共にきちんと終わらせなければいけません。発酵は二冬を越して行われます。アルコール発酵が完了しないうちにマロラクティック発酵が始まってしまう場合も時にはありますが、問題ではありません。
- ワインは上質な澱上で熟成されます。澱の自己破壊がゆっくり進み、拡散されて、ワインに興味深いアロマを伝えていくのです。
- この長い熟成の間、酸化作用は制御・抑制されていなければいけません。木樽は補填されます。可能な限り人の手を加えないようにします。バトナージュは禁止です。瓶詰め前に一度だけ澱引きを行います。小穴の多い新樽や風通しのよいセラーなどは、ワインの酸化を促進してしまうため、新樽の使用やセラーの換気は制限します。最後に、ワインの酸化の観点から、セラー中の樽の配置の仕方も大切です。
ここで分かることは、ワインの熟成のためのセラーは大変重要だということです。経験から言えることは、同じワインの樽でも、セラーに置かれた位置が異なれば、異なった熟成をします。また、平均温度が11~12度のセラーと、13~14度のセラーでは、異なったワインになります。
- 異なる木樽のワインをアッサンブラージュしたあと、軽くフィルターにかけ、清澄作業をします。
- ワインの熟成前酸化を防ぐために、最後に瓶詰め前に軽く亜硫酸塩を加えます。二酸化硫黄が大体30~40mg/l 含まれるようにします。生産者は各自この値を経験から知っており、醸造の方法によって決められます。
4. 用語解釈
バトナージュ
ワイン醸造の際のテクニックで、「バトン」と呼ばれる金属の棒で木樽の底に溜まった澱を混ぜます。これは、澱の粒子を分散させ、澱とワインの接触面積を増やし、そしてワインを酸化させる効果があります。これは、一般的に、よく言われる「バターの味わい」をつくり、若いうちから開いた、より脂肪質(グリセリン)なワインにします。このテクニックは、長期熟成によって獲得されるべきものを短期に得る手段とみなすべきでしょう。バトナージュの適用は、本質的に経済的理由です。1年以上樽熟成させないので、二種類の生産年のワインをセラーに同時に保存する場所の確保が省けます。バトナージュは、ワインの種類によっては疲れさせてしまうので、熟成前酸化の危険性をかなり増やす疑いがあります。
参照: 原文(仏語)
併せて読みたいその他の記事:
0 件のコメント:
コメントを投稿
You are welcome to leave messages. Thanks for avoiding flames.
コメントをお願いいたします。