2017年7月27日木曜日

良質でないネゴシアンの成功について

原文(Français) > Du succès du négoce peu qualitatif...

ムルソーの著名生産者友人--Mr X--と最近やりとりした内容をここに紹介します。ちなみに、マティニョン(仏首相官邸)はXの作ったワインを購入しているそうです。
内容は、良質ではないと思われるAOCワインを販売している巨大ネゴシアンの成功についてです。やり取りをそのまま掲載しますので、私個人の意見だけを反映している訳ではないことを断っておきます。

ルイ・ジャド社がサントネイのドメーヌ・プリウール=ブルネを最近取得した件について議論しました。

私-- X、畑の過度の集中について貴方の意見を伺ったけれども、ワインについて私が憂慮しているのは、ジャド、ベジョ・・・などの、良質でなくて且つ安いワインを販売する者が成功を収めていることだ。昨日もまたコート・デュ・ローヌのネゴシアン企業(ラファエル・ミシェル)がAOCの巨大詐欺の捜査を受けている。この企業の売上高は3千万ユーロにもなるそうだ・・・要するに、良質でないものが成功しているのだ!!!! で、私がとても残念に思っているのは、そういう者たちがAOCのワインをできるだけ安く売ることで、AOCシステムの評価の恩恵を受けていることだ。つまり、そのAOCの評判は、ネゴシアンのワインの品質によって形成されたわけではないのだ。(訳注: 大ネゴシアン企業は、AOCの畑を買収し、製品は良質でなくともそのAOCを名乗ることで、他の優良生産者の築き上げてきたAOCの評価を得ながらも安売りすることで成功している。)

X-- うん、君は良くわかってる。現在の大ネゴス企業は、吸血鬼かなにかのように、一括して売りに出たドメーヌの畑を全て買っている。そもそもネゴスが、容易に価格差を正当化できるクリマと格付けの表記を始めたこともあり、うなぎ登りのブドウの価格などを彼らが独占的に決定している。それが小規模ネゴシアンをどんどん追い出して自分たちの供給元を確保するやり方で、そうして自分らの選択した販路で好きなように販売できるわけだ。
問題は、生産者農家の所有者と、畑、特に上級クリュをどんどん取得していく醸造ネゴシアンとの間の不均衡さが大きくなっていることだ。ネゴシアンのワイン作りは残念なことに大変大雑把で、彼らのワインが伝説的クリマに求められるレベルであることは大変稀だ。ドタバタコメディーがワインを作っているようだ。

私-- 悲しいね!私は、ネゴシアンの有名ブランドのワインが、そのAOCのレベルだったためしがないと思っている。そういうワインを試飲する機会は時々あるけれど、その都度「ああ、確かに良くない・・・」と思う。そして更に最悪なのが、そういう企業のワインがよく売れていることだ。輸出ワインを見るとよく分かる。日本(もしくはアジア全体)では、グラン・クリュと村名ならば、同じアペラシオンなら安ければ安いほどよく売れる(但しプルミエ・クリュは例外)。その上、ネゴシアンが雑誌や批評家やソムリエ協会などのスポンサーとなって、これらいつも同じブランドが至る所で見られる。レストランも同じ論理で、同じアペラシオンの中なら出来るだけ安いものだ。星付きレストランのワインリストを見た? ルイ・ジャドが至る所にある‼ そんなソムリエやワイン屋がしっかり仕事してるとは言わないでくれ。

X-- 格付けとクリュの名前ばかりが追い求められている。ワインがその格付けに値することは滅多になく、名声を不動のものとする著名生産者以外は殆ど流動的でない! けれど、そこの誰もがあまり流動的でないことをとても望んでいる・・・ワインを本当に良く知る人というのは所詮売上の1%でしかない。つまり、無いに等しい。

私-- はい、貴方が言おうとしているのは、上質ワインの市場はほぼ無いに等しいと。人々は格付け、ブランド、そして伝説化した名前に麻痺している。だけど一方で、私が感銘しているドメーヌが成功を収めるのを目の当たりにすると、私はとても嬉しい。彼らの成功だけれど、私も安心する・・・著名生産者については私は貴方とちょっと意見の違うところもある。私も全てを知っているわけではないけれど、試飲すると明らかに素晴らしいものもある一方、どうしたらこういうワインに情熱的になれるのか全く理解できないものもある。


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